Y氏は自宅に数名の知人を招き、生ガキを振る舞った。
「先日、故郷の漁師から生ガキを頂いたのですが、とても一人では食べ切れなくて」
食卓は生ガキで賑わっている。
「生モノですから、早めにどうぞ」
Y氏が勧めると食卓へ一斉に箸が伸び、生ガキは見る間に食べ尽くされて行く。
その後、雑談を交えて数時間が過ぎた。
「では、そろそろ」
Y氏が御開きを促すと、知人の一人が食卓を指差して言った。
「生ガキが一切れ残っています。誰か召し上がって下さい」
「どうぞ、どうぞ」
皆そう言って人に勧め、誰も生ガキに手を付けない。残り物には、時々当たりがある
というのに。
「では、私が」
Y氏は最後の生ガキを口にして、見事に食あたりを起こした。
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