2016年3月27日日曜日

第63話「死に際」

その夜、酒に酔ったY氏の心に魔が忍び込んだ。

ー自宅まで、少し運転するだけだー

Y氏はハンドルを握り、車を発進させた。

やがて自宅に近付くと、バックミラーにパトカーが映った。Y氏は職務質問を恐れ

た。

ーこのまま逃げ切ってしまえー

Y氏はアクセルを踏み込んだ。すると突然、前方に人の姿が見えた。

ー危ないー

Y氏はブレーキを踏んだが間に合わなかった。直ぐにパトカーが追いつき、Y氏は警

察官に捕らえられた。

「前方不注意だな。それに酒臭いぞ」

「相手は、なぜか急に飛び出して来たのです」

「言い訳は無用だ」

Y氏の弁明は通じなかった。

翌日、警察官がY氏に告げた。

「被害者が亡くなった。所持品の中に、遺書が見つかったらしい」

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