「こんな時間に独り歩きは危険だよ」
駅の改札を抜け、Y氏は女を気遣った。
「心配しないで。もう、ここでいいわ」
「いや、そうはいかない。俺が家まで送るよ」
Y氏の心は穏やかではない。既に時刻は夜の11時を過ぎている上に、この辺りは特に
物騒な地域でもある。
「大丈夫よ。家は直ぐそこだから」
「でも...」
Y氏は男のメンツを保つべく、女に付き添って歩く。すると前から強面の男が近付い
てきた。
「おう、なかなかイイ女を連れているじゃないか」
男はドスの利いた声を放ち、女に手を掛けようとした。
「やめろよ」
Y氏は声を震わせながらも勇敢に立ち向かう。しかし男の力が勝った。
「いい加減にしろや」
開口一番、女が男を締め上げた。