Y氏は郵便配達の大ベテランだ。バイクを巧みに乗りこなして三十年、郵便物を運ん
で町中を走っている。一日で数百件に上る配達などは、Y氏にしてみれば朝飯前の事
だ。
この春にはY氏の転勤が決まり、新しい赴任先での初日がスタートした。
「首を長くして待っていました」
Y氏は大いに歓迎された。
「お世話になります」
挨拶が終わると、Y氏に新しい配達先が告げられる。
「じゃあ、頼みますよ」
「行ってきます」
Y氏は出発した。
やがて日が暮れる頃、Y氏はただ一件の配達を終えて戻って来た。
「それにしても、大変な配達を任されたものだ」
Y氏は疲れ果て、ふと漏らした。
人里離れた山の頂上に建つ一軒家。そこがY氏の新しい配達先である。
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