2016年3月7日月曜日

第43話「郵便配達」

Y氏は郵便配達の大ベテランだ。バイクを巧みに乗りこなして三十年、郵便物を運ん

で町中を走っている。一日で数百件に上る配達などは、Y氏にしてみれば朝飯前の事

だ。

この春にはY氏の転勤が決まり、新しい赴任先での初日がスタートした。

「首を長くして待っていました」

Y氏は大いに歓迎された。

「お世話になります」

挨拶が終わると、Y氏に新しい配達先が告げられる。

「じゃあ、頼みますよ」

「行ってきます」

Y氏は出発した。

やがて日が暮れる頃、Y氏はただ一件の配達を終えて戻って来た。

「それにしても、大変な配達を任されたものだ」

Y氏は疲れ果て、ふと漏らした。

人里離れた山の頂上に建つ一軒家。そこがY氏の新しい配達先である。

0 件のコメント:

コメントを投稿