2016年5月27日金曜日

第77話「踏切ゲーム」

一郎と二郎は双子の小学生。二人は帰り道の踏切で何時もゲームを楽しんでいる。そ

れは遮断機が下りてから幾つ数えて踏切を渡れるかという度胸試しの踏切ゲームだ。

その日、まず一郎が10を数えて踏切を渡った。

「次は僕の番だ」

二郎がそう言って列車を待つ・・・。

やがて警笛が鳴り、遮断機が下りた。

「1,2・・・」

二郎は11まで数え、急いで踏切を渡り始めた。そこへ特急列車が・・・。二郎は死ん

だ。

次の日、一郎は帰り道の途中で、遮断機の下りた踏切の向こうに二郎の姿を見た。

「早くおいでよ」

その声に誘われて一郎が踏切を渡る。そこへ特急列車が・・・。

一郎は二郎の声を聞いた。

「もう大丈夫。僕たちは、列車をすり抜けてしまうから」

2016年5月20日金曜日

第76話「学級崩壊」

新人教師のK子は、この春から小学校四年生のクラス担任になった。

―よし、頑張るぞ!―

K子は希望に胸を膨らませた。

しかし、希望は失望へと変わって行く。話を聞かない子供、成績が伸びない子供、規

則を守らない子供・・・。

―もう、やっていられない―

K子は、わずか半年で鬱を起こした。

更にクラスでは悪質なイジメが起こる。ある生徒の机に菊の花が飾られていたのだ。

まるで死人を弔うかの様に。生徒は悪戯を苦にして自殺をした。

その後、同じ悪戯が続いて、クラスの生徒が次々と自殺をして行く。

「誰の悪戯なの」

K子の問いかけに、生徒は誰も答えない。

ある放課後、教室に居残る者がいた。

「皆、死ねばいい」

K子は菊の花を机に飾った。

2016年5月12日木曜日

第75話「タイムトラベル」

M博士は助手の頭に装置を被せ、タイムトラベルの実験を開始した。

「それでは、過去を旅してもらいましょう」

M博士はそう言って、装置のチャンネルを千年前に合わせた。

「何が見えますか」

「驚きです。古代の風景が見えます。博士、この装置の原理を教えて下さい」

「あなたの古い記憶を呼び覚ましたのです。やはり人間には前世があるのでしょう」

「では博士、まだ記憶が無い未来の私を見る事は可能ですか」

「可能です。未来のあなたは、あなたが想像した通りの姿になります。つまり、思考

は現実化するのです」

「なるほど」

「では、想像して下さい。あなたは将来、どの様な自分をお望みですか」

M博士は装置のチャンネルを未来に合わせた。

2016年5月4日水曜日

第74話「成功報酬」

Y氏は、ごく普通のサラリーマンである。一日八時間の単調な仕事をこなし、毎月決

まった額の給料を支給される。昇給は雀の涙ほどだ。

ー全く、面白くない仕事だー

やる気の起きない毎日を過ごすY氏。

ー何か成功報酬が欲しい。そうだ・・・ー

ある日、試しに副業を始めてみると上手く行き、Y氏はすっかり味をしめた。成功報

酬は日によって異なるが、それなりの小遣いになる。

ーもう、やめられないー

何しろ副業の方は上手くやった分だけ成功報酬が得られるのだ。緊張やプレッシャー

も伴うが、ある種の快感にも似た達成感が得られ、本業の何倍も面白味がある。

ー今日は、いくら儲かるだろうかー

Y氏は人混みに紛れ、標的の懐にそっと手を伸ばした。