Y氏は先輩に連れられて、とある居酒屋の暖簾をくぐった。
「乾杯」
二人はグラスを合わせ、一杯目の酒を勢いよく飲み干してゆく。そして二杯目、三杯
目と進んで酔いが深まってくると、二人は熱く人生論を語り始めた。
「先輩、人間の一番の幸せとは何だと思いますか」
Y氏は先輩に初めてそんな事を聞いた。
「いい質問だ。俺も君と同じくらいの歳の頃には、その事をよく考えたものだ」
「それで、どんな答えが出たのですか」
「簡単さ。人間は見たい物を見て、聞きたい物を聞き、美味しい物を味わい、いい香
りを嗅ぎ、触りたい物を触ればいい。つまり、幸せとは五感を満たす事だよ」
「なるほど。でも僕は、触りたい物を触って痛い目にあいました」
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