2018年2月1日木曜日

第109話「極上かりんとう」

ある日、スーパーで買い物中のY氏は、偶然にも昔の知人と再会した。

「どうも、お久しぶりです。これ、食べた事ありますか?」

知人は、かりんとうのお菓子を手にしている。

「いえ、ありませんが」

「これ、味が極上ですよ

 知人は、それだけをY氏に言い残した。

―そんなに極上なのか?―

 Y氏が試しに買って食べてみると

「この甘さは、病みつきになる」

 それ以来、極上かりんとうはY氏を虜にした。

 後年、Y氏は道端で再びあの知人と偶然に出会った。

「また、お会いしましたね。ところで、極上かりんとう、食べてみましたか?」

「はい、確かに味は極上です。お陰様で糖尿病を患ってしまい

2017年11月5日日曜日

第108話「階段」

 Y氏は子供の頃から、人生の階段をトントン拍子に駆け上ってきた。
 
 小学校から成績は常にトップクラス。

そして一流大学に進学すると、そのまま一流企業へ就職。

おまけに、都内にマイホームを建て、ガレージには高級外車。

その上、妻はとびきりの美人である。

正に、人も羨むエリート人生とはこの事だ。

しかし、数年前にY氏は人生で最大の挫折を味わった。

その時、Y氏は人生の更なる階段を上る覚悟を決めた。

そして、いよいよその日がやって来た。

「何か、思い残す事はないか?」

「はい、何もありません」

「よし、そろそろ時間だ」

 看守に促されて、Y氏は処刑台へと続く最後の階段を上った。

2017年8月13日日曜日

第107話「未来日記」

 高校に進学したY子は、両親から一冊の日記帳をプレゼントされた。

 真新しい白紙のページを開くと、Y子はある名案を思い付く。

「普通の日記を書くだけじゃつまらない。だったら楽しい明日を想像して、それを日

記にしよう」

 そこでY子は、この日記を”未来日記”と名付けた。

 そして最初のページに日記を書くと、次の日から不思議な事が起こり始めたのだ。

「何て事かしら?日記に書いた事が、本当に現実になるなんて」

 Y子は当初、それはただの偶然であると思っていた。

 しかし、同じ事は毎日のように続いた。次の日も、その次の日も...

  文字通り未来日記である。

 そして一年後、未来日記は全てのページが埋まった。

 すると、Y子の明日も空白となり...

2017年5月20日土曜日

第106話「健忘症」

ーあれは何だったかな...ー

Y氏は、ここのところ物忘れがひどい。

その日、Y氏は昼過ぎから買い物に出掛けたが、いざデパートに着いてみると何を買

いに来たのかさえ忘れてしまう始末だった。

仕方なく何も買わないまま、Y氏は手ぶらでトボトボと家路をたどる羽目になった。

そして自宅マンションに到着し、鍵を閉めていた事さえも忘れて玄関のドアを開けよ

うとした。

すると...、なぜかドアがスッと開いてしまったのだ。

ーあれっ、鍵は閉めた筈なのにー

ふと、Y氏の記憶が蘇った。

ー空き巣かもしれないー

直ぐに警察へ連絡をすると、駆け付けた警察官が事情を確認してY氏にこう告げた。

「ここは、あなたの部屋のちょうど真下なのですが...」

2017年2月23日木曜日

第105話「ビッグな男」

”アメリカンドリーム”

Y氏も、この言葉に魅了された日本人の一人であった。

そしてY氏は行動を起こした。

「俺はアメリカに行って、ビッグな男になって帰って来る!」

Y氏は友人達にそう言い残し、期待に胸を膨らませて日本を飛び立ったのだ。

それから3年後、Y氏は久しぶりに日本へと戻ってきた。

もちろん、ビッグな男になって...

「お前、随分とビッグな男になったじゃないか」

Y氏と再会した友人は、開口一番にそう言った。

「そうだろう。君もアメリカに行けばビッグになれる」

誇らしげに、そう答えるY氏。

すると、友人は興味深げにY氏にこう聞いた。

「ところで、アメリカで何を食べるとそんなにビッグになれるんだい?」

2016年12月2日金曜日

第104話「男のメンツ」

「こんな時間に独り歩きは危険だよ」

駅の改札を抜け、Y氏は女を気遣った。

「心配しないで。もう、ここでいいわ」

「いや、そうはいかない。俺が家まで送るよ」

Y氏の心は穏やかではない。既に時刻は夜の11時を過ぎている上に、この辺りは特に

物騒な地域でもある。

「大丈夫よ。家は直ぐそこだから」

「でも...」

Y氏は男のメンツを保つべく、女に付き添って歩く。すると前から強面の男が近付い

てきた。

「おう、なかなかイイ女を連れているじゃないか」

男はドスの利いた声を放ち、女に手を掛けようとした。

「やめろよ」

Y氏は声を震わせながらも勇敢に立ち向かう。しかし男の力が勝った。

「いい加減にしろや」

開口一番、女が男を締め上げた。

2016年11月25日金曜日

第103話「身の上話」

Y氏の携帯に女から連絡が入った。

「ねえ、私ともう一度だけ会ってくれないかしら」

Y氏は先日、女と別れたばかりである。二股をかけられたY氏の方が女に愛想を尽かしたの

だ。

「お前とやり直す気はないが、会うだけならいいだろう」

どうやら女はY氏に未練があるらしい。Y氏は女の要求を呑んだ。

そして数日後...

「やっぱり、私にはあなたが必要だわ。だから、もう一度やり直して欲しいの。実は私...」

女が涙ながらに辛い身の上話を始めると、Y氏は同情の顔色を浮かべて女の話に聞き入っ

た。

「話は、それで終わりか」

「ええ、そうよ。ごめんなさい、つい気持ちが高ぶってしまって...」

「それにしても、よくできた作り話だな」