2016年3月1日火曜日

第37話「手品師」

Y氏は最近、手品を覚え、その腕前を知人に披露した。

「誰か一万円札を持っていませんか」

Y氏の問いかけに、知人の一人が財布から一万円札を取り出すと、それをY氏に差し

出した。

「それでは、この一万円札を消して見せましょう」

Y氏はそう言って、手にした一万円札にハンカチを被せた。

「1、2、3」

掛け声と同時にY氏がハンカチをめくると、見事に一万円札が消えていた。知人から

拍手が上がる。

「今度は、一万円札を元に戻します」

Y氏はハンカチで手を覆った。

「1、2、3」

Y氏がハンカチをめくると、消えた筈の一万円札が現れた。再び拍手が上がる。

ーこれは、いい商売になるー

Y氏は手にした偽の一万円札を、知人にお返しした。

0 件のコメント:

コメントを投稿