ある晴れた日曜日、Y氏は十年ばかり乗り慣れた愛車でサイクリングに出発した。
走り出して暫くすると、Y氏は前ブレーキに違和感を覚える。愛車を止め、点検の為
に前ブレーキをギュッと握ると、プツンとワイヤーが切れてしまった。
ー十年も乗っていれば、こんな事もあるー
修理を頼もうと思ったが、生憎ジュース代しか持ち合わせていない。
ー後ろブレーキが利いているから大丈夫だろう。よし、出発だー
愛車は再び走り出し、やがて高台の下り坂に差し掛かる。加速と共に、Y氏は清々し
い風を受けた。
ー気持ちいい、最高だー
その時、前方を横切る通行人がいた。
ー危ないー
Y氏が慌てて後ろブレーキを握ると、ワイヤーがプツンと音を立てた。
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