2016年3月20日日曜日

第56話「アナウンス」

休日の昼下がり、Y氏はようやく目を覚ました。

ーもう、こんな時間かー

Y氏は布団から起き上がると部屋のカーテンをめくり、窓を開け放った。するとアナ

ウンスの声が聞こえてきた。

「只今、廃品を回収しております。不用品の処分に困っている方は、何時でも声を掛

けて下さい。あなたの事、待っています」

それは、とろける様な年若い女性の声であった。Y氏は声の主を想像しながら、思わ

ず鼻の下を長くした。

ーちょっと、見てくるかー

Y氏は、わざわざ廃品を探し出して表へ出た。そしてアナウンスの車に近付き、嬉し

気に中を覗き込んだ。

「お待ちしていました」

車内のオヤジがニヤリと笑う。

テープから流れ出る美声に誘われて、また別の男がやって来た。

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