2016年2月28日日曜日

第35話「幽霊列車」

列車が大好きなサトシは、小学一年生の男の子。

その日、仕事から戻って来た父がサトシに言った。

「サトシ、列車でも見に行こうか」

「行こう、行こう」

大喜びのサトシは、父に連れられて自宅から程近い踏切へと向かった。そこは、サト

シが夢中になって楽しめる場所である。

「パパ、ほら見て。列車がやって来たよ」

そう言ってはしゃいでみせるサトシに、父は黙ってうなずいている。

「パパ、人がたくさん乗っているよ」

「仕事帰りの人たちだよ」

こうしてタカシは時が経つのも忘れ、次々とやって来る列車を眺めていた。そこへま

た列車がやって来た。

「パパ、今度は誰も乗っていないよ。幽霊列車かな」

暗がりの中、通り過ぎた列車は車庫へと向かった。

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