「ねえ、一緒に住まない」
「ああ、そうしよう」
男と女の気持ちが高まり、二人は同棲を始めた。
しかし三年が過ぎた頃、二人の同棲生活は倦怠の中にあった。一つ屋根の下に住んで
いながら、その大半の時間を別々に過ごし、一緒に摂る食事の最中でさえ十分な会話
もない。
そんな生活に耐え兼ねた男が、ふと漏らした。
「なあ、もう別れないか」
「どうしたの、急に」
「俺たち、これ以上一緒にいる理由が無いと思うけど」
「どうして」
「君と僕は互いが空気みたいな存在で、いてもいなくても同じだろう」
「そうかもしれないけど、別れる理由も無いと思うの」
「何故だ」
「だって、空気は目には見えないけど、無くなると死んでしまうわ」
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