2016年2月9日火曜日

第17話「男と女」

「ねえ、一緒に住まない」

「ああ、そうしよう」

男と女の気持ちが高まり、二人は同棲を始めた。

しかし三年が過ぎた頃、二人の同棲生活は倦怠の中にあった。一つ屋根の下に住んで

いながら、その大半の時間を別々に過ごし、一緒に摂る食事の最中でさえ十分な会話

もない。

そんな生活に耐え兼ねた男が、ふと漏らした。

「なあ、もう別れないか」

「どうしたの、急に」

「俺たち、これ以上一緒にいる理由が無いと思うけど」

「どうして」

「君と僕は互いが空気みたいな存在で、いてもいなくても同じだろう」

「そうかもしれないけど、別れる理由も無いと思うの」

「何故だ」

「だって、空気は目には見えないけど、無くなると死んでしまうわ」

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