2016年2月18日木曜日

第26話「窮鼠」

あるアパートの一室で、文学青年の二人が談笑している最中、飼い猫が何かの動きに

素早く反応した。

「おい、ネズミがいるじゃないか」

猫は部屋の片隅にネズミを追いやり、今にも捕まえようとしていた。

「うん。窮鼠、猫を噛むっていう諺があるけど、あれは本当かな」

「それは、どうだろう。俺は猫を噛んでいるネズミなんて見た事がないけど」

猫とネズミは睨み合い、その場を動こうとしない。

「なあ、ネズミの口元を見てみろよ」

ネズミは慌てる様子もなく、しきりにモグモグと口を動かしている。

「まるで、ガムでも噛んでいるみたいだ」

「全く。あれじゃあ、窮鼠、ガムを噛むだよ」

「新しい諺だな」

「あっ、はっはっはっ」

二人は大笑いした。

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