その朝、Y氏は何時もと同じ通勤電車に乗り込んだ。何か思い詰めた顔をしている。
ー俺みたいな人間は、いない方がいいー
Y氏はスーツの内ポケットに遺書を忍ばせていた。
ここの所、職場での人間関係が上手くいっていない。良かれと思って言った事が全て
裏目に出てしまう。やがてY氏は孤立し、仲間を失った。
「あんな奴、辞めてしまえばいいのに」
そんな噂まで聞こえてくる。
ー俺も嫌われたものだ。これ見よがしに社の屋上から飛び降りてやるー
Y氏はそう決意し、何気なく車内を見回した。すると、ある車内広告がY氏の目を引
いた。
"今週のベストセラー「嫌われ者の成功哲学」"
Y氏はスーツの内ポケットに手を伸ばし、遺書を握りつぶした。
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