秋の夜長に母が幼子に聞かせていた昔話は、いよいよクライマックスを迎えていた。
「お爺さんは娘との約束を破り、こっそりと部屋の中を覗きました。すると一羽の鶴
がいました」
幼子は興味深く耳を傾け、母は話を続けた。
「鶴は口にくわえた包丁を研いでいました。そして、お爺さんに気付いてこう言いま
した。お爺さん、覚えていますか。私は山で罠にかかっていた鶴です。あの時、どう
して私を助けてくれなかったのですか」
幼子は顔を強張らせ、母は更に話を続けた。
「そして鶴は、お爺さんに包丁で襲い掛かりました。おしまい、おしまい」
「お母さん、なんだか怖い話だね。何て言うお話なの」
「鶴の倍返しよ」
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