その朝は特に寒気が強く、通勤で行き交う人々の吐く息が白い。
ホームで電車を待つY氏の髪が、師走の風になびいた。
暫くすると電車が到着した。Y氏が乗車して扉の脇に立つと、車内に冷たい空気が流
れ込んだ。
「扉が閉まります」
そんなアナウンスと同時に勢いよく階段を上り、電車に駆け込んで来るスキンヘッド
のオヤジがいた。
「駆け込み乗車は危険です」
オヤジはアナウンスを聞き流し、辛うじてY氏の目の前に乗り込んだ。よほど走った
のか、肩で息をしているオヤジの額からは、この寒さの中で大粒の汗がにじみ出てい
る。
冷えた空気が漂う車内で、熱を帯びたオヤジの汗は白い蒸気となり、スキンヘッドの
頂上から見事に立ち上った。
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