その夜、女は男の家を訪れていた。夢中で話し込んでいる内に、やがて夜が更けてし
まう。
「私、もう帰らなきゃ」
「終電の時間は過ぎているよ」
「私の家は一駅向こうだから、歩いて帰るわ」
「夜の独り歩きは危険だし、君の家まで送るよ」
二人は夜道を歩き、やがて女の家に着いた。
「ありがとう、助かったわ。あなたは、どうやって帰るの」
「タクシーも見当たらないし、歩いて帰るよ」
「夜の独り歩きは危険だわ。あなたの家まで送ってあげる」
二人は夜道を歩き、やがて男の家に着いた。
こうして二人は互いの家を何度も往復するのだった。
「私たち、一体いつまで歩き続けるのかしら」
「あと少しだよ、ほら」
男はそう言って、東の空を指差した。
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