2016年2月27日土曜日

第34話「夜道」

その夜、女は男の家を訪れていた。夢中で話し込んでいる内に、やがて夜が更けてし

まう。

「私、もう帰らなきゃ」

「終電の時間は過ぎているよ」

「私の家は一駅向こうだから、歩いて帰るわ」

「夜の独り歩きは危険だし、君の家まで送るよ」

二人は夜道を歩き、やがて女の家に着いた。

「ありがとう、助かったわ。あなたは、どうやって帰るの」

「タクシーも見当たらないし、歩いて帰るよ」

「夜の独り歩きは危険だわ。あなたの家まで送ってあげる」

二人は夜道を歩き、やがて男の家に着いた。

こうして二人は互いの家を何度も往復するのだった。

「私たち、一体いつまで歩き続けるのかしら」

「あと少しだよ、ほら」

男はそう言って、東の空を指差した。

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