2016年1月30日土曜日

第9話「新作」

作家、嵐山五郎の待望の書き下ろしが、間もなく完成しようとしていた。原稿用紙で

数百枚に及ぶ物語の出来栄えは、残りの数枚を如何に埋めるかにかかっている。

ーリアリティ、もっとリアリティがほしい・・・ー

ここへ来て、嵐山のペンの勢いがピタリと止まった。

「先生、そろそろ新作の発表の時期が近付いているのですが」

編集者の催促が、重圧として嵐山の肩に伸し掛かる。

それから数週間後、嵐山から原稿を受け取った編集者は、その出来栄えを絶賛した。

「先生、ラストの殺人シーンなどは正に天下一品です」

「やはり作家たるものは、究極のリアリティを追い求めるべきだよ」

嵐山はそんな言葉を残し、数日後に殺人の容疑で逮捕された。

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