「一緒に、ワインでもどう」
女はボトルを手に取り、男にそう勧めた。
「頂こうか」
女は二つのグラスにワインを注いだ。片方には、予め毒が塗られてある。
ー遊びだったなんて、許せないー
込み上げる女の怒り。男は不倫の末に、女を捨てようとしていた。
「どうぞ」
男はグラスを受け取り、匂いを嗅ぐ。
「いい香りだ。君のワインはどう」
男はそう言って女の手からグラスを奪い取り、匂いを嗅いで見せた。
「同じよ」
「確かに」
男は女にグラスを戻した。
「乾杯」
グラスを合わせ、ワインを飲み干す二人。すると突然、女が苦しみ始めた。
「一体、どういう事・・・」
「俺はプロのマジシャンだ。一瞬の隙にグラスを入れ替える事など、訳も無く簡単な
事さ」
0 件のコメント:
コメントを投稿