2016年1月25日月曜日

第4話「ワインの香り」

「一緒に、ワインでもどう」

女はボトルを手に取り、男にそう勧めた。

「頂こうか」

女は二つのグラスにワインを注いだ。片方には、予め毒が塗られてある。

ー遊びだったなんて、許せないー

込み上げる女の怒り。男は不倫の末に、女を捨てようとしていた。

「どうぞ」

男はグラスを受け取り、匂いを嗅ぐ。

「いい香りだ。君のワインはどう」

男はそう言って女の手からグラスを奪い取り、匂いを嗅いで見せた。

「同じよ」

「確かに」

男は女にグラスを戻した。

「乾杯」

グラスを合わせ、ワインを飲み干す二人。すると突然、女が苦しみ始めた。

「一体、どういう事・・・」

「俺はプロのマジシャンだ。一瞬の隙にグラスを入れ替える事など、訳も無く簡単な

事さ」

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