「お母さん、今日はいい天気ね」
K子が優しく声を掛ける。小春日和の下で、K子は車椅子を押しながら桜の並木通りを歩いて
いた。
母は余命半年の宣告を受けている。まだ四十八歳の若さだ。母はK子を出産して直ぐに離婚
し、女手一つでK子を育てた。そしてK子は一流企業に就職を果たした。
だが、ようやく母の肩の荷が下りた矢先に...。
ーずっと母のそばにいようー
母の余命宣告を聞き、K子は仕事を辞めて母の看病に専念した。それが最後の親孝行にも
なる。
「本当にいい天気」
母がそう言って空を見上げた時、いきなり乗用車が車椅子に突っ込み...。
「お母さん!」
母の死を悟ったK子。
ーいくら償ってもらえるかしらー
K子は薄ら笑いを浮かべながら、算盤をはじいた。
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