朝の満員電車は豚小屋の様に息苦しい。
電車を降りて目にするホームの人波は、まるで豚の大群に見える。Y氏は豚の大移動
さながらの行列に混じり、ようやく改札を抜けた。
昼になると、食事処はどこも満員だ。カウンター席に押し込まれ、体を縮めて食事を
するY氏の姿は、餌にありついた豚を思わせる。
やがて終業時刻になり、Y氏は立ち飲み屋で安酒にありついた。店は客でひしめき合
い、まるで豚の酔い処にでもいる気分だ。
最終電車でY氏が自宅に戻ると、無断の外飲みに腹を立てた嫁は玄関を開けてくれな
い。Y氏は仕方なく猫の額ほどの庭で横になった。
「俺は豚じゃない」
Y氏は呟いた。そこは満員の豚小屋を思えば、甚だ快適なのかもしれない。
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