警備員のY氏は、今日が某ビルディングでの最後の勤務だ。
Y氏には唯一の心残りがあった。Y氏と顔を合わせる度に、何時も感じの良い挨拶をするオフ
ィスレディがいる。せめて最後に一言をと思っているのだが...。
いつもの通りY氏がフロアーを巡回していると、偶然にも一人でエレベーターを待つ例のオフィ
スレディがいた。女神の粋な計らいであろう。
「私、今日が最後なのです」
Y氏が初めて声を掛けた。
「えっ、せめて連絡先だけでも教えていただけませんか」
思いがけない返答。人目に触れる前に、Y氏は急いでメモ帳に電話番号を記そうとした。しか
し途中でボールペンのインクが切れ...。その途端、満員のエレベーターが開いた。
ーとんだ悪戯だなー
Y氏は女神に失望した。
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