その朝、ヒロシの携帯が鳴った。
「母さんだよ、元気かい」
「元気だよ。もう仕事に行かなきゃ」
珍しい母からの電話。短い会話の後、ヒロシはマンション建設の現場に向かった。
新人警備員のヒロシは、クレーンの積み荷の下で安全管理を行っている。その日は風
が強い。ヒロシが見上げると、吊り荷がひどく風を受けていた。
ー危ない、落ちてくるー
そう思った瞬間、バランスを崩した吊り荷の鉄骨がヒロシの頭上へと降り注いだ。ヒ
ロシの体は幾つにも切り刻まれ...。
「おい、大丈夫か」
作業員が駆け寄り、刻まれたヒロシの体が拾い集められ、そして復元された。変わり
果てたヒロシに発せられた、叫びにも似た声。
「直ぐに救急車が来る、諦めちゃ駄目だ!」
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