2016年7月1日金曜日

第82話「空飛ぶ少年」

「わーい、雪だ」

小学一年生の翔太は空を見上げた。勢いよく舞い落ちて来る牡丹雪を眺めていると、

まるで自分の体が空へと吸い込まれて行く様な錯覚さえ起こる。翔太は空飛ぶヒー

ローさながらに、空へ向けて両手を伸ばした。

ーまるで、空を飛んでいるみたいー

そんな幻想に浸っていると、突然、翔太の足が地面から浮き上がった。

「あっ」

翔太は声を上げた。幻想は現実となり、翔太の体は空高く昇り始めた。見下ろせば、

何もかもがミニチュアの様だ。

それから、どれくらい高く昇っただろうか・・・。やがて雲の切れ間から青空が見え

始めると雪の勢いは衰え、そして翔太の視界から雪が消えた。

「あっ」

翔太が再び声を上げた時、その体は重量を帯び・・・。

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