Y氏は強かに酔い、タクシー乗り場に向かっていた。すると途中で、露店の占い師を
見かけた。
「試しに占ってもらおうか」
「分かりました」
Y氏が手を差し出し、占い師は鑑定を始めた。
「あなたの手相には、近い将来に事業で大成功する運勢が見えます」
「本当かい」
「はい。但し、お酒には注意して下さい」
「分かっている」
Y氏は気を良くし、あと少し飲みたくなった。
やがてY氏はすっかり泥酔し、最後の店を出る。
「俺の人生は、前途有望だ」
Y氏は独り言を口にしながら、フラフラと道路へとはみ出した。そこへ運悪く車が
突っ込み・・・。
Y氏は致命傷を負った。そして死に際で呟いた。
「全く、酒の魔力というやつは、運勢に余計な手を加えやがる」
2016年3月31日木曜日
2016年3月30日水曜日
第66話「生ガキ」
Y氏は自宅に数名の知人を招き、生ガキを振る舞った。
「先日、故郷の漁師から生ガキを頂いたのですが、とても一人では食べ切れなくて」
食卓は生ガキで賑わっている。
「生モノですから、早めにどうぞ」
Y氏が勧めると食卓へ一斉に箸が伸び、生ガキは見る間に食べ尽くされて行く。
その後、雑談を交えて数時間が過ぎた。
「では、そろそろ」
Y氏が御開きを促すと、知人の一人が食卓を指差して言った。
「生ガキが一切れ残っています。誰か召し上がって下さい」
「どうぞ、どうぞ」
皆そう言って人に勧め、誰も生ガキに手を付けない。残り物には、時々当たりがある
というのに。
「では、私が」
Y氏は最後の生ガキを口にして、見事に食あたりを起こした。
「先日、故郷の漁師から生ガキを頂いたのですが、とても一人では食べ切れなくて」
食卓は生ガキで賑わっている。
「生モノですから、早めにどうぞ」
Y氏が勧めると食卓へ一斉に箸が伸び、生ガキは見る間に食べ尽くされて行く。
その後、雑談を交えて数時間が過ぎた。
「では、そろそろ」
Y氏が御開きを促すと、知人の一人が食卓を指差して言った。
「生ガキが一切れ残っています。誰か召し上がって下さい」
「どうぞ、どうぞ」
皆そう言って人に勧め、誰も生ガキに手を付けない。残り物には、時々当たりがある
というのに。
「では、私が」
Y氏は最後の生ガキを口にして、見事に食あたりを起こした。
2016年3月29日火曜日
第65話「空気読めない」
休憩室に居合わせた同僚の二人が、ある後輩の噂話を始めた。
「うちの会社で、空気が読めない人間は誰だと思う」
「KYと言ったら、もちろん新人のキムラだよ」
二人は小声で話を続けた。
「やっぱり、君もそう思うだろう」
「そう。言ってみれば、キムラはKYの代名詞みたいな人間さ」
「それは言えるな。それにしても、キムラのKYはひどすぎるよ」
「確かに。だって、キムラは生まれつきのKYだから手に負えない。正に筋金入りだ
よ」
「どうして、生まれつきだと分かる」
「どうしてって、キムラをイニシャルで読んでみな」
「キムラ、ユウ・・・。確かに、筋金入りのKYだ」
「うちの会社で、空気が読めない人間は誰だと思う」
「KYと言ったら、もちろん新人のキムラだよ」
二人は小声で話を続けた。
「やっぱり、君もそう思うだろう」
「そう。言ってみれば、キムラはKYの代名詞みたいな人間さ」
「それは言えるな。それにしても、キムラのKYはひどすぎるよ」
「確かに。だって、キムラは生まれつきのKYだから手に負えない。正に筋金入りだ
よ」
「どうして、生まれつきだと分かる」
「どうしてって、キムラをイニシャルで読んでみな」
「キムラ、ユウ・・・。確かに、筋金入りのKYだ」
2016年3月28日月曜日
第64話「死にきれない男」
Y氏は事業に失敗し、莫大な借金を背負った。
ーこうなったら、いっその事・・・ー
Y氏は将来を悲観し、自らの手で何度も命を絶とうと試みた。しかし、なぜか死にき
れないのだ。
首を吊ればロープが切れ、川に身を投じれば水深が浅く、車に飛び込めば上手く交わ
される。早い話が、Y氏は運が良いのである。
ーどうやら俺は、死に神との相性が悪いらしいー
Y氏は運命に逆らわず、生きる決心をした。
数年後、Y氏の運転する車が大爆発を起こした。誰もがY氏の死を予感した時、Y氏
は炎の中から奇跡的に生還を果たした。
「見事な脱出劇でしたね」
レポーターがY氏にマイクを向ける。
「俺は死にきれない男さ」
スタントマンのY氏は、そう答えた。
ーこうなったら、いっその事・・・ー
Y氏は将来を悲観し、自らの手で何度も命を絶とうと試みた。しかし、なぜか死にき
れないのだ。
首を吊ればロープが切れ、川に身を投じれば水深が浅く、車に飛び込めば上手く交わ
される。早い話が、Y氏は運が良いのである。
ーどうやら俺は、死に神との相性が悪いらしいー
Y氏は運命に逆らわず、生きる決心をした。
数年後、Y氏の運転する車が大爆発を起こした。誰もがY氏の死を予感した時、Y氏
は炎の中から奇跡的に生還を果たした。
「見事な脱出劇でしたね」
レポーターがY氏にマイクを向ける。
「俺は死にきれない男さ」
スタントマンのY氏は、そう答えた。
2016年3月27日日曜日
第63話「死に際」
その夜、酒に酔ったY氏の心に魔が忍び込んだ。
ー自宅まで、少し運転するだけだー
Y氏はハンドルを握り、車を発進させた。
やがて自宅に近付くと、バックミラーにパトカーが映った。Y氏は職務質問を恐れ
た。
ーこのまま逃げ切ってしまえー
Y氏はアクセルを踏み込んだ。すると突然、前方に人の姿が見えた。
ー危ないー
Y氏はブレーキを踏んだが間に合わなかった。直ぐにパトカーが追いつき、Y氏は警
察官に捕らえられた。
「前方不注意だな。それに酒臭いぞ」
「相手は、なぜか急に飛び出して来たのです」
「言い訳は無用だ」
Y氏の弁明は通じなかった。
翌日、警察官がY氏に告げた。
「被害者が亡くなった。所持品の中に、遺書が見つかったらしい」
ー自宅まで、少し運転するだけだー
Y氏はハンドルを握り、車を発進させた。
やがて自宅に近付くと、バックミラーにパトカーが映った。Y氏は職務質問を恐れ
た。
ーこのまま逃げ切ってしまえー
Y氏はアクセルを踏み込んだ。すると突然、前方に人の姿が見えた。
ー危ないー
Y氏はブレーキを踏んだが間に合わなかった。直ぐにパトカーが追いつき、Y氏は警
察官に捕らえられた。
「前方不注意だな。それに酒臭いぞ」
「相手は、なぜか急に飛び出して来たのです」
「言い訳は無用だ」
Y氏の弁明は通じなかった。
翌日、警察官がY氏に告げた。
「被害者が亡くなった。所持品の中に、遺書が見つかったらしい」
2016年3月26日土曜日
第62話「ライバル」
一郎と二郎は双子の兄弟であり、互いに良きライバルでもあった。
先に生まれた兄の一郎と、後から生まれた弟の二郎が、ある意味で生まれる時から競
争を始めていたとすれば、まずは先に生まれた一郎の勝ちと言える。
以来、二人は何においても先を争った。ただ、二郎は一郎に勝てなかった。あと少し
の所で、何時も一郎に先を越されてしまうのだ。
ー何時か一郎に勝ちたいー
二郎は常にそんな気持ちで生きていた。
しかし、その願望は果たされないまま、やがて二人は高校生になった。
そんなある日、不幸にも一郎が交通事故で死んでしまう。二郎は悲しみつつも、悔し
い思いをした。
ー兄さん、俺よりも先に死なれたら、また兄さんの勝ちじゃないかー
先に生まれた兄の一郎と、後から生まれた弟の二郎が、ある意味で生まれる時から競
争を始めていたとすれば、まずは先に生まれた一郎の勝ちと言える。
以来、二人は何においても先を争った。ただ、二郎は一郎に勝てなかった。あと少し
の所で、何時も一郎に先を越されてしまうのだ。
ー何時か一郎に勝ちたいー
二郎は常にそんな気持ちで生きていた。
しかし、その願望は果たされないまま、やがて二人は高校生になった。
そんなある日、不幸にも一郎が交通事故で死んでしまう。二郎は悲しみつつも、悔し
い思いをした。
ー兄さん、俺よりも先に死なれたら、また兄さんの勝ちじゃないかー
2016年3月25日金曜日
第61話「特効薬」
ドクターKが両親に告げた。
「息子さんは、もう手遅れです。ただ、人体実験を通じて試験薬を使用すれば、助
かる可能性もあります」
「息子に人体実験を施して下さい」
両親は懇願した。
「分かりました」
ドクターKは息子の体に試験薬を投与した。
「先生、それは何の薬ですか」
「若返りの薬です。上手く行けば、息子さんは健康だった頃の体に若返ります」
薬の効果は直ぐに現れた。息子の年齢は後戻りを始め、しかも若返りは進行し続ける
のだ。すると息子の体は次第に小さくなり、遂に消えてしまった。
「実験は失敗です」
以後、母はショックで長期入院した。その間、母の体には身に覚えの無い変化が起き
た。
ー私、妊娠したみたい。もしかして・・・ー
「息子さんは、もう手遅れです。ただ、人体実験を通じて試験薬を使用すれば、助
かる可能性もあります」
「息子に人体実験を施して下さい」
両親は懇願した。
「分かりました」
ドクターKは息子の体に試験薬を投与した。
「先生、それは何の薬ですか」
「若返りの薬です。上手く行けば、息子さんは健康だった頃の体に若返ります」
薬の効果は直ぐに現れた。息子の年齢は後戻りを始め、しかも若返りは進行し続ける
のだ。すると息子の体は次第に小さくなり、遂に消えてしまった。
「実験は失敗です」
以後、母はショックで長期入院した。その間、母の体には身に覚えの無い変化が起き
た。
ー私、妊娠したみたい。もしかして・・・ー
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