―あんな記憶は、真っ白に消し去ってしまいたい―
Y氏を苦しめる悪夢の様な記憶。
三年前、Y氏の自宅が全焼した。焼け跡からは、見るも無残に変わり果てた妻と子供が発見
された。その光景はY氏の脳裏に深く刻み込まれ、未だに消える事はない。
以来、Y氏は深い悲しみの縁から抜け出せないでいるのだ。
そんなある日、Y氏は何時もの様に暗い表情ををして公園のベンチに腰掛けていた。目の前
では見知らぬ女と子供が楽しそうに戯れている。
すると突然、女はY氏に声を掛けた。
「何か悲しい事でもあったのですか」
「実は、三年前に妻と子供を亡くし...」
「消し去りたい記憶ですね」
「はい」
女は珍しい消しゴムを取り出し、Y氏の額をこすり始めた。
0 件のコメント:
コメントを投稿