2016年11月11日金曜日

第101話「消したい記憶」

―あんな記憶は、真っ白に消し去ってしまいたい―

Y氏を苦しめる悪夢の様な記憶。

三年前、Y氏の自宅が全焼した。焼け跡からは、見るも無残に変わり果てた妻と子供が発見

された。その光景はY氏の脳裏に深く刻み込まれ、未だに消える事はない。

以来、Y氏は深い悲しみの縁から抜け出せないでいるのだ。

そんなある日、Y氏は何時もの様に暗い表情ををして公園のベンチに腰掛けていた。目の前

では見知らぬ女と子供が楽しそうに戯れている。

すると突然、女はY氏に声を掛けた。

「何か悲しい事でもあったのですか」

「実は、三年前に妻と子供を亡くし...」

「消し去りたい記憶ですね」

「はい」

女は珍しい消しゴムを取り出し、Y氏の額をこすり始めた。

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