2016年11月4日金曜日

第100話「スルメ男」

―俺は結婚できるだろうか―

Y氏は物思いに耽りながら、好物のスルメを酒の肴にビールをグイッと飲み干した。

Y氏は今年で四十歳になる。真面目で誠実、見た目も悪くないのだが未だに独身なのだ。結

婚するには十分に値する男なのだが...

Y氏は友人から、こう告げられた事がある。

「お前は奥深くて掴み所の無い人間だから、理解するには骨が折れる。それが結婚相手の見

付からない理由さ。早い話が、お前はスルメ男だよ」

そんな話を思い出しながら、Y氏はスルメをつまんで口に入れた。

―スルメ男とは上手く言ったものだ―

やけに感心しながら、Y氏はスルメをじっくりと噛みしめる。

スルメは口の中で、噛めば噛むほどに味わいを増し...


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