―俺は結婚できるだろうか―
Y氏は物思いに耽りながら、好物のスルメを酒の肴にビールをグイッと飲み干した。
Y氏は今年で四十歳になる。真面目で誠実、見た目も悪くないのだが未だに独身なのだ。結
婚するには十分に値する男なのだが...
Y氏は友人から、こう告げられた事がある。
「お前は奥深くて掴み所の無い人間だから、理解するには骨が折れる。それが結婚相手の見
付からない理由さ。早い話が、お前はスルメ男だよ」
そんな話を思い出しながら、Y氏はスルメをつまんで口に入れた。
―スルメ男とは上手く言ったものだ―
やけに感心しながら、Y氏はスルメをじっくりと噛みしめる。
スルメは口の中で、噛めば噛むほどに味わいを増し...
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